自己破産する際に必要な費用
1 自己破産での自己負担金
タイトルを読んで、「お金がないから破産するのに、破産に費用がかかるのであれば破産できないのではないか?」という素朴な疑問を持たれた方もいるのではないかと思われます。
一理ありますが、生活保護受給者を除き、自己負担金なしで破産申立てをすることはできないというのが現実です。
2 弁護士費用
破産手続を弁護士に依頼する際、基本的に弁護士報酬を支払う必要があります。
弁護士報酬は、弁護士・事務所ごとに異なる基準を設けており、一律ではないため、それぞれ確認する必要があります。
今すぐには支払えないため、分割支払いに応じてくれる弁護士・事務所は多く見られますが、特殊事例を除き、ボランティアで受任してくれるところはないと考えられます。
「弁護士に頼まず、個人で破産申立てをすればいいじゃないか」と思われた方がいるかもしれません。
確かに、弁護士に委任することは法律上の要件ではありませんし、破産申立てに関する書籍はいたるところで販売され、インターネット上にもそれなり情報がアップされています。
しかし、必要かつ正確な情報を取捨選択して、適切に破産申立てを行うのは、非常に困難です。
また、個人からの申し立てであれば、客観性確保の観点から、裁判所判断で管財事件に付される可能性が高いと考えられます。
管財事件になれば、管財費用として少なくない金額を納付しなければならなくなることから、弁護士に委任した場合と比べ、かかった費用に大差がなくなってしまいます。
それ故、弁護士費用は、事実上不可欠と言ってよいでしょう。
純粋な弁護士報酬とは別に、郵送費やコピー代等も必要となります。
事務所によって、計算方法や単価が異なりますので、気になる方は事前にチェックしておくべきでしょう。
3 裁判所に納付する費用
前述のとおり、管財事件となる場合は、管財費用の納付が求められます。
管財事件となる基準は、地域によって違いがありますが、換価価値の高い資産が残されている場合、事業者で在庫を抱えていた莉、従業員を雇用していたりした場合、資産隠しや偏頗弁済等の法律に抵触する行為が認められる場合等は、可能性が高まると考えられます。
また、破産者は官報に掲載されるため、掲載費用として、別途1~2万円が必要となります。
自己破産のメリット・デメリット
1 メリット
裁判所から免責許可の決定を受けたら、債権者に対する借金返済が免除されること(破産法253条1項本文)が、最大のメリットと考えられます。
なお、破産手続きにおいては、裁判所への報告の漏れがないよう、申立前にしっかり確認・調査することが肝要です。
2 デメリット
⑴ 財産を失うこと
自己破産すると、所有する土地・建物は、競売や任意売却によって換価され、債権者への配当に回されるため、必然的に失うことになります。
個人再生では、住宅資金特別条項を設けて、住宅ローンを支払っている自宅建物を残す手続きが用意されていますが、破産にそのようなものはありません。
なお、自己名義の資産を他人名義に仮装する等の資産隠しを行うと、そのような名義変更が取消し・無効の対象になるほか、刑罰の対象になります(破産法265条1項2号等)。
差押禁止動産(民事執行法131条参照)にあたらない動産は、費用倒れになるような価値の低いものを除き、換価されて債権者への配当に回されるため、結果として失うことになります。
典型例としてあげられるのは、自動車(年式が古すぎる国産車両は除く)です。
生活や通勤に必要だからと主張しても、このような理由で対象外となることは基本的にありません。
⑵ 一部の職業について制限を受けること
他人の財産や秘密を扱う職業は、破産手続開始決定から復権(破産法255条1項)まで、一時的に資格が使えなくなります(詳細は、各法律によって規定されています)。
一例をあげると、次のようなものです(※ あげたもの以外にも多数あります)。
- ア 弁護士
- イ 司法書士
- ウ 税理士
- エ 公認会計士
- オ 警備員
破産開始決定から復権までの期間は、手続きによってばらつきがあります。
同時廃止であれば、約2カ月間です。
簡易な配当有りの管財事件では、約6カ月間です。
債権回収や不動産売却を伴うような管財事件では、1年以上に及ぶと考えられます。
⑶ 仕事を失う結果となること
民法653条2号は、委任の終了事由として「破産手続開始の決定を受けたこと」と規定しています。
会社と役員との関係は、通常、委任契約によっているから、役員が破産した場合は、必然的に役員を退任することになります。
⑷ 社会的な評価・信用が低下すること
法的な効果ではありませんが、破産をしたことについて、マイナスの評価をする方が多いのが実情です。
そのため、これまで取引をしてくれていたところが応じなくなったり、取引継続の条件を厳しくしたりすることがあります。
社会的な評価・信用については、破産手続き終了後も影響が長期間続くことが予想されます。
放っておいても、評価・信用が元に戻ることはないため、評価・信用を上げていくため相応の努力が必要になると思われます。
自己破産とはどのような手続きか
1 自己破産を検討されている方へ
「月々の返済額が多くて返済が苦しい」「借金が増えすぎて完済までの見通しが立たない」といったことでお悩みの方の中には、自己破産を検討されている方もいらっしゃるかと思います。
ただ、自己破産は具体的にどのようなものなのか、よくわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、自己破産とはどのような手続きかを簡単にご説明しようと思います。
2 自己破産は裁判所を通じた手続きである
自己破産は、裁判所に必要書類をそろえて申立てをし、借金の支払義務をなくすことが相当であると認められれば、裁判所の決定により借金の支払義務が免除される手続きです。
3 自己破産の手続きには2種類ある
自己破産の手続きには、「同時廃止事件」と、「破産管財事件」の2種類があります。
両者の違いは、破産管財人が選任されるか否かという点にあります。
破産管財人が選任される場合には、自己破産の際に裁判所に納める金額が同時廃止事件と比べて高くなり、債権者集会という裁判所で開かれる期日に出席することが必要になります。
4 自己破産が認められない場合もある
自己破産の手続きは、必要書類をしっかりとそろえ、裁判所の指示に真摯に従い、破産管財人の業務に協力すれば、自己破産が認められる可能性は高いです。
しかし、浪費やギャンブル、投資等で借金を作ってしまった場合や一部の債権者に対してのみ返済(偏頗弁済)をしてしまった場合、裁判所に提出した書類に虚偽の記載があった場合等には、自己破産、厳密には免責が認められない可能性もあります。
5 財産を処分しなければならない可能性がある
松阪市を管轄する地方裁判所の運用では、自己破産をした場合、20万円を超える価値のある財産や、総財産の金額で99万円を超える財産については、処分しなければならなくなる可能性があります。
6 信用情報に傷がつく
自己破産をすると、信用情報センターに情報が登録され、5年~10年にわたり、借入れやクレジットカートの利用、作成、ローンを組んでの買い物ができなくなる可能性が高いです。
7 自己破産のご相談は当法人まで
以上、自己破産について、簡単に概要をご説明しました。
当法人では、自己破産等の借金の問題に関するご相談は原則として無料でお受けしておりますので、自己破産についてもっと知りたい、詳しく相談したいとお考えの方は、当法人までお気軽にご相談ください。